オウンドメディアリクルーティングとは?採用コストを抑える方法と採用広報についても解説

オウンドメディアリクルーティングとは?採用コストを抑える方法と採用広報についても解説
この記事のまとめ

オウンドメディアリクルーティングは、自社が運営するメディアを通じて求職者に企業の魅力を発信し、コストを抑えて採用効果を高める手法です。

本記事ではその概要から具体的な進め方、成功事例までを網羅的に紹介し、導入に迷う企業担当者の悩みを解決します。オウンドメディアリクルーティングの基本的な考え方から、メリット・デメリット、導入方法、成功事例までを包括的に解説します。

さらに、採用広報や採用サイトとの違いも明らかにし、企業ごとの最適な活用方法を見つけるヒントを解説します。

採用活動の見直しが求められる中、「自社発信」で人材を惹きつけるオウンドメディアリクルーティングに注目が集まっています。

ここではその背景や導入の必要性、本記事の全体像について整理します。

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目次

オウンドメディアリクルーティングとは

オウンドメディアリクルーティングとは

「オウンドメディアリクルーティング」とは、企業が所有するWebサイトやブログ、SNSなどを活用して自社の魅力を求職者に直接伝え、採用活動を行う手法のことです。

これは求人広告のように費用をかけて露出を得るのではなく、自社の声で語ることで長期的なブランディングと人材獲得を実現します。

たとえば、あるベンチャー企業では社員インタビューを定期的に自社ブログで配信することで企業文化に共感した人材からの応募が増加しました。

人材の質も向上し、離職率も改善されたという成果が報告されています。

採用活動の現状と課題

多くの企業では、採用活動における広告費や紹介料の高騰に悩まされています。

また、求人票では伝えきれない企業文化や職場の雰囲気が求職者に伝わらず、ミスマッチによる早期離職が発生するケースも珍しくありません。

今の求職者は、企業の理念や働く人の人柄、職場のリアルな様子に強く関心を持っています。こうした情報を届ける手段として、オウンドメディアの活用が有効だと考えられています。

オウンドメディアリクルーティングの定義

オウンドメディアリクルーティングの定義

まずはオウンドメディアリクルーティングという言葉の意味を明確にし、混同しやすい他の用語との違いを理解しておきましょう。

ここでは基本的な定義と構造を整理します。

オウンドメディアとは何か

オウンドメディアとは自社が所有し、運営している情報発信メディアを指します。

たとえば、コーポレートサイト、採用ブログ、SNSアカウントなどが該当します。

これらは企業が自らのメッセージを自由に発信できる場として、長期的なブランディングや採用活動に活用されています。

求人広告のように掲載期間に制限がなく、自社のペースで継続的に情報を届けられる点が大きな魅力です。

とくに採用の場面では、社員の声や職場の雰囲気、企業理念など「求人票では伝えにくい内容」を伝える手段として効果的です。

メディアリクルーティングとの違い

メディアリクルーティングとは、主に求人広告や外部メディアを活用して人材を集める手法を意味します。

これは自社運営ではなく、第三者のプラットフォームを介して情報を発信する点でオウンドメディアとは異なります。

比較項目 オウンドメディアリクルーティング メディアリクルーティング
媒体の所有者 自社 外部企業
コスト構造 定額または無料で内製可能 掲載費・成果報酬が発生
ブランディングの自由度 高い 制限あり
即効性 低いが持続的効果が期待できる 高いが短期的

採用戦略としてどちらを重視すべきかは、企業の目的や状況によって異なります。

ただ、長期的な採用力の強化を目指すならオウンドメディアの活用が有効です。

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採用サイトとオウンドメディアの違いと役割

採用サイトとオウンドメディアの違いと役割

混同されやすい「採用サイト」と「オウンドメディア」ですが、それぞれの役割と役立て方は大きく異なります。ここではその違いを明確にします。**

採用サイト:事実・募集要項中心

採用サイトは、募集職種や条件、福利厚生など、応募に必要な「事実情報」を提供する場所です。

採用条件や会社概要、選考プロセスなど、応募時に必要な情報を簡潔かつ正確に伝えることが求められます。

これはいわば「企業の公式資料」のような存在であり、信頼性と明確性が重視されます。

逆に、感情に訴えるようなストーリー性やカルチャー紹介は苦手な媒体です。

オウンドメディア:共感・ストーリー訴求中心

一方、オウンドメディアは、企業の想いや人となり、社風などを感情的に伝える役割を担います。

「この会社で働きたい」と思わせるための“共感装置”であり、採用サイトでは補えない部分をカバーします。

この2つは「使い分ける」のではなく、「組み合わせる」ことが重要です。

採用サイトで基礎情報を届け、オウンドメディアで深い共感を育てるという、両輪での運用が理想的です。

採用広報とは

採用広報とは

採用広報とは企業が採用に向けて情報発信する活動全般を指します。

ここではその概念と、オウンドメディアとの関係性を整理します。

オウンドメディアが採用広報に有効な理由

採用広報とは、求職者に対して「この会社で働きたい」と思ってもらうための情報発信活動です。

企業が行うブログ・SNS・動画配信などの情報発信もすべて採用広報の一環といえます。

その中でもオウンドメディアは、継続性と自由度の高さ、企業カラーを反映できる柔軟さを持っています。

求職者が求人票以上の情報を求める今、採用広報の中核に位置づけられる存在といえるでしょう。

社員のリアルな声や職場の雰囲気を継続発信できる

オウンドメディアでは、社員一人ひとりの価値観や働き方を直接届けることができます。

とくに若年層の求職者はテキストよりも動画やSNSでの発信に親しみを持っており、タイムリーな情報提供が信頼感を生みます。

継続的に発信することで、「企業の中身」が透けて見えるようになり、応募前から企業理解が深まることはミスマッチの防止や志望度の向上にも直結します。

オウンドメディアリクルーティングのメリット

オウンドメディアリクルーティングのメリット

オウンドメディアリクルーティングには採用コストの削減やブランディング強化、ミスマッチの防止など多くの利点があります。

ここでは主な3つのメリットを具体例とともに解説します。

採用コストを削減できる理由

従来の採用手法では、求人広告費や人材紹介会社への手数料が大きな負担となっていました。

とくに1名あたり数十万円かかるケースも珍しくありません。

一方で、オウンドメディアを活用すれば、自社で情報を発信するため外部コストがほぼかからず済みます。

たとえば、あるIT企業では自社ブログとYouTubeで社員の働き方を発信するようになった結果、広告出稿をせずに採用を完結できるようになりました。

このように初期の準備と継続的な運用に力を入れることで固定費に近い形で採用活動を内製化できます。

自社の魅力を効果的に伝えられる

求人媒体ではフォーマットが決まっており、文字数や掲載内容に制限があるため、企業の個性を表現するのが難しいという声が多くあります。

オウンドメディアであれば、自由な形式で企業文化や働き方を発信でき求職者との距離を縮めることができます。

たとえば、「社員の一日」「新人のリアルな感想」「社内イベントのレポート」など、日常の様子を切り取った情報は文字だけの求人票にはない親近感や共感を生み出します。

求職者の“企業理解”を深めることで、納得感のある応募を後押しします。

採用のミスマッチを防止できる

求人票だけを見て応募した場合、「入社してみたらイメージと違った」というミスマッチが起こりやすくなります。

その結果、早期離職や定着率の低下を招くことも。オウンドメディアでは、職場環境や働き方を事前に伝えることでこうしたズレを減らせます。

実際にある中堅企業では、社員の座談会動画や職場紹介を公開したことで、「応募前に会社の雰囲気がわかった」といった声が増え内定辞退率が3割以上減少しました。

応募者の理解度が高まり、結果として採用の質も安定するのです。

オウンドメディアリクルーティングのデメリット

オウンドメディアリクルーティングのデメリット

一方で、オウンドメディアリクルーティングには即効性の低さや体制構築のハードルといった課題も存在します。

ここではその現実的な注意点を解説します。

即効性が低く成果までに時間がかかる

オウンドメディアリクルーティングは、「記事を書いたらすぐ応募が来る」といった即効性を期待しにくい手法です。

検索エンジンに評価されるまでには時間がかかり、コンテンツの蓄積と継続運用が必要不可欠です。

たとえば、ブログ記事やSNS運用を始めても、半年ほどはアクセスや応募数に変化が見られないケースもあります。

そのため、短期採用を目的とした手段とは別に、並行して中長期の仕組みとして捉えることが重要です。

社内での体制構築が必要

コンテンツの発信を社内で行うには、誰が何を発信するか、どのような頻度で運用するかといった明確な体制が必要です。

しかし現場には「書く人がいない」「撮影や編集の知識がない」といった課題もつきまといます。

このような場合には、外部パートナーと連携して設計を行ったり、社員からの素材提供を元に広報担当が編集・配信したりする工夫が求められます。

また、最初から完璧を目指すのではなく、まずは小さな成功体験を積み重ねることが大切です。

オウンドメディアリクルーティング成功事例3選

オウンドメディアリクルーティング成功事例3選

実際にオウンドメディアを活用して採用成果を上げた企業の事例からは多くの学びが得られます。

ここではこれまで対応した3社の取り組みを紹介し成功要因を紐解きます。

A社:エンジニア採用で応募単価を1/3に

関西のIT企業A社では、求人媒体への依存を減らすため、自社のテックブログを立ち上げました。

現場エンジニアが登場する記事を週1回更新した結果、検索経由の流入が増え、半年後にはエンジニアからの直接応募が急増。

従来30万円以上かかっていた応募単価が約10万円まで削減できました。

B社:社員ブログで早期離職を半減

福岡の中小製造業B社では、「会社のリアルを伝える」ことを重視し、社員の日常や働き方を綴るブログを開設。

内容は手書き感あるテキストや写真で、親近感がわく構成に。

結果、入社後のギャップが減り、1年以内の離職率が半分にまで減少しました。

C社:地方企業が首都圏の人材を獲得

長野県に拠点を持つC社では、「地方×挑戦」というテーマで採用コンテンツを強化。

東京在住の求職者に向けたUターンインタビューや自然に囲まれた働き方を紹介する動画を発信したところSNSで話題に。

遠方からの応募が急増し、実際に都内から3名の採用につながりました。

オウンドメディアを使った採用の第一歩

オウンドメディアを使った採用の第一歩

オウンドメディアリクルーティングを成功させるには闇雲に始めるのではなく、まずは戦略的な土台づくりが不可欠です。

ここでは目的設定と発信設計の基本について解説します。

目的設計とKPI設定

最初に行うべきは、採用活動においてオウンドメディアを活用する目的を明確にすることです。

たとえば、「認知度の向上」「特定職種の応募数アップ」「離職率の改善」など達成したいゴールは企業ごとに異なります。

目的が定まれば、次に設定するのはKPI(重要業績評価指標)です。

これは効果を可視化するための数値目標であり、例として「月間ブログPV数」「SNSフォロワー数」「採用サイトのCVR」などがあります。

漠然とした成果を期待するのではなく、「なぜやるのか」と「何を見て成功とするのか」を最初に整理しておくことで効果測定がしやすくなり、社内説得や継続運用のモチベーションにもつながります。

誰に何を伝えるかを明確化する

目的が決まったら、次に考えるべきは「誰に向けて、どんな情報を発信するのか」です。

採用したい人物像(ペルソナ)を明確にし、その人が求めている情報や価値観を踏まえてコンテンツを設計します。

たとえば、「20代前半のエンジニア志望者」であれば、「実際の開発フロー」「働き方の自由度」「最新技術への取り組み」などに関心が高い傾向があります。

そのニーズを想定し、具体的な記事や動画を用意することで、より刺さる情報発信が可能になります。

コンテンツの種類と発信戦略

コンテンツの種類と発信戦略

誰に何を伝えるかが定まったら、次はどんなコンテンツを発信するかがカギとなります。

ここでは反応の良い3つの代表的なコンテンツを紹介します。

社員インタビュー

社員インタビューは、求職者にとって非常に人気のあるコンテンツです。

仕事内容だけでなく、働く上での価値観や、職場の雰囲気、入社理由などをリアルな言葉で語ってもらうことで共感や信頼を得られやすくなります。

たとえば、「元営業職だったAさんがなぜこの会社でエンジニアになったのか」といったテーマは転職を考える読者にとって関心の高い内容です。

顔写真や日常のカットを加えるとより温かみのある印象を与えられます。

1日の仕事紹介

求職者にとって気になるのは「実際に働く姿がどうなのか」です。

そのため、社員のある1日のスケジュールを紹介する記事や動画は人気です。

時間帯ごとの業務内容や、休憩時間の過ごし方などを具体的に見せることで職場の臨場感を伝えることができます。

たとえば、ありきたりですが、

9:00 出社 → 10:00 チームミーティング → 12:00 ランチ(社内カフェで) → 14:00 クライアント対応 → 18:00 退社

という1日の流れを写真やイラストとともに紹介すると効果的です。

座談会レポート

複数の社員による座談会は、会社のカルチャーや人間関係の空気感を伝えるのに最適です。

「新卒×中途」「ママ社員×時短社員」などのテーマを設定し、それぞれの立場から本音を語ってもらうと、リアルで読み応えのある記事になります。

形式ばらず、笑いや驚きがあるようなやり取りをそのまま載せることで、「この会社楽しそう」「自分も溶け込めそう」と思ってもらえる可能性が高まります。

オウンドメディアリクルーティングの体制と運用フロー

オウンドメディアリクルーティングの体制と運用フロー

コンテンツの設計ができたら、いよいよ運用体制づくりです。

ここでは、社内体制と外部リソースの使い方について具体的に説明します。

社内広報チーム・人事との連携方法

オウンドメディアリクルーティングは、人事だけで完結する取り組みではありません。

情報発信に慣れている広報部門や、日常の現場情報を持っている現場チームとの連携が不可欠です。

まずは定期的な打ち合わせやチャットグループを設け、コンテンツの企画会議を行いましょう。

「誰が書くか」「誰が監修するか」「どこに掲載するか」を明確に決めることで、属人化を防ぎながら安定した運用が可能になります。

外部パートナーの選び方

社内にノウハウやリソースがない場合、最初は外部パートナーの力を借りるのも有効です。

ライターやカメラマン、編集者、SEOコンサルタントなど自社の課題に応じた専門家を選びましょう。

選定の際には、「採用分野に特化した実績があるか」「中長期の運用提案ができるか」を確認することがポイントです。

また、単発で終わらず、ノウハウ移転も視野に入れて関係を構築することが望ましいです。

まとめ

オウンドメディアリクルーティングは企業が持つ“伝える力”を最大限に活かし、採用コストを抑えながらも質の高い人材と出会える持続可能な採用手法です。

従来型の採用活動に限界を感じている企業にとって、自社の魅力や価値観を「自分たちの言葉」で語ることは求職者とのミスマッチを防ぎ、長期的な採用ブランディングの基盤を築くうえで非常に有効です。

本記事でご紹介したように、オウンドメディアリクルーティングは、戦略設計・コンテンツ企画・運用体制づくりといった段階を丁寧に踏むことで、無理なく取り組める施策です。

事例にもあるように、実際に成果をあげている企業も増えており、地方や中小企業にとっても現実的かつ効果的なアプローチといえます。

「どんな人と一緒に働きたいか」「何を伝えたいか」を明確にし社内のリソースを活かしながら、まずは小さくスタートしてみましょう。

継続的に発信を続けることで採用だけでなく、社内外の信頼構築や企業価値の向上にもつながるはずです。


参考文献