アーンドメディアとは?オウンドメディアとの違いや運用方法を解説

企業やブランドの情報発信は、もはや広告だけでは信頼を得られない時代です。
現代の消費者は他人の意見や実体験に重きを置く傾向が強くなっており、口コミやSNS投稿など第三者による自然な情報拡散がマーケティングの成否を左右します。
そこで注目されているのが「アーンドメディア」です。 本記事では、アーンドメディアの意味や特徴、他のメディアとの違い、効果的な活用法までを具体的に解説します。
企業担当者やマーケターはもちろん、これから広報を学びたい方にとっても実践的な内容をお届けします。
- アーンドメディアの意味と特徴を理解する
- ペイド・オウンドとの違いを明確にする
- 成功事例から活用イメージをつかむ
- SNS時代のアーンドメディア戦略
- 効果測定とデメリットにも注目する
目次
アーンドメディアとは
アーンドメディアとは、企業が直接コントロールしない「第三者による自然発生的な情報拡散」のことです。
ここでは、アーンドという言葉の意味や背景、そして近年この手法がマーケティングにおいて注目される理由について解説します。
アーンド(Earned)の本来の意味と由来
「Earned」は英語で「獲得された」「努力して得た」という意味を持ちます。 アーンドメディアとはその名の通り、自社の努力や製品の価値によって“得られる”口コミやSNSでの言及、報道などのメディア露出を指します。
たとえば、「このカフェ最高!」という投稿がInstagramで話題になると、それは企業が意図的に仕掛けたものではなくユーザーの体験から生まれたものになります。
このように、自然な形で他者から発信される情報が信頼性の高いマーケティング効果を持つのです。
なぜアーンドメディアが注目されるのか
広告疲れが叫ばれる中、消費者は企業からの一方的な情報に警戒心を持つようになっています。そんな中で信頼されているのが「第三者の声」です。
たとえば、ある商品を購入しようとしたときに、公式サイトの情報よりも実際に使った人のレビューやSNSの投稿を重視する人が増えています。
こうした流れの中で、アーンドメディアは自然で信頼できる情報源として多くの企業にとって欠かせない存在になっています。
アーンドメディアの種類と具体例を紹介
アーンドメディアにはさまざまな形式があります。SNSでの投稿や口コミ、レビュー記事、ニュース掲載などがその代表例です。
ここではそれぞれの特徴と使い分け方を詳しく解説します。
アーンドメディアの代表的な例
アーンドメディアに該当するものは多岐にわたりますが代表的なものをいくつか挙げてみましょう。
- SNSでのユーザー投稿(X/Twitter、Instagram、TikTokなど)
- ブログやYouTubeでの紹介コンテンツ
- クチコミサイト(Googleレビュー、食べログなど)での評価
- ニュースメディアやWebメディアによる自発的な掲載
たとえば、小さなベーカリーが「クロワッサンが絶品」とTwitterで話題になり、そこから地元メディアに取り上げられて行列店になる。
これも立派なアーンドメディアの効果です。
メディアごとの違いと使い分け
メディアごとに発信される情報の性質や拡散力、信頼性は異なります。 それぞれの特性を理解し、目的に応じた活用が求められます。
メディア | 特徴 | 活用シーンの一例 |
---|---|---|
Twitter/X | 拡散力が高く、リアルタイム性がある | 新商品やキャンペーンの話題化に最適 |
視覚的訴求力が強い | 飲食・ファッションなど映え重視の業種 | |
ブログ・レビュー | 詳細な体験談で信頼を得やすい | 商品・サービスの比較検討時 |
このように目的や業種によって適切なメディアを選定し、どのような話題を生むかまで設計することが大切です。
SNS・口コミ・レビューの位置づけ
アーンドメディアの中でも特に注目されているのが、SNS、口コミ、レビューの3つです。
- SNS:話題性や拡散性が高く、短期的な集客や認知拡大に効果的。
- 口コミ:知人や友人からの紹介が多く、信頼性が高い。
- レビュー:検索時に見られるため、購買直前の後押しになる。
この3つをどのように組み合わせ、顧客の行動フェーズに合わせて設計するかが成功の鍵となります。
ペイドメディアとオウンドメディアの違い
アーンドメディアを理解するには、ほかの2種類のメディア—ペイドメディアとオウンドメディアとの違いを把握することが欠かせません。
ここでは、それぞれの定義と特徴を比較しながら、3つのメディアを組み合わせる戦略についても解説します。
ペイドメディアとの違い
ペイドメディアとは、広告費を支払って露出を得るメディアのことです。
具体的には、リスティング広告やディスプレイ広告、タイアップ記事などがこれに当たります。
一方、アーンドメディアは金銭的対価を支払わず、消費者やメディアが自発的に取り上げてくれることで成り立ちます。
広告は即効性がありコントロールしやすい反面、信頼性は相対的に低くなりがちです。 つまり、「企業が言っていること」と「ユーザーが言っていること」の違い。
後者であるアーンドメディアは第三者の意見という形を取るため、ユーザーからの信頼を得やすいというメリットがあります。
オウンドメディアとの違い
オウンドメディアは、企業が自ら保有・管理する情報発信の場を指します。 たとえば、自社ブログや公式サイト、メールマガジンなどが該当します。
オウンドメディアはブランディングや長期的なSEO対策に向いていますが、情報の信頼性は「企業が自分で発信している」ためユーザーによっては懐疑的に受け取られることもあります。
それに対してアーンドメディアは、客観的な評価や意見を通じて信頼を獲得するもの。
オウンドメディアと比べて情報の広がりは制御しにくいものの、消費者の行動に大きな影響を与える力を持っています。
3つのメディアを組み合わせる戦略とは
それぞれのメディアは単体で使うのではなく、3つを戦略的に組み合わせることで相乗効果を発揮します。
これを「トリプルメディア戦略」と呼びます。
メディア | 主な役割 | メリット |
---|---|---|
ペイドメディア | 認知を素早く広げる | 即効性がある/露出をコントロール可能 |
オウンドメディア | ブランドや知識を蓄積する | 長期的な資産となる/SEOに強い |
アーンドメディア | 信頼と共感を得る | 信頼性が高い / 自然な拡散力がある |
たとえば、新商品をペイドメディアで告知し、オウンドメディアで詳しい情報を発信しユーザーがSNSで感想をシェアするという流れが理想的な展開です。
アーンドメディアの成功事例を紹介
実際にアーンドメディアを活用して成果を上げた企業の事例を見ることで、具体的な戦略のヒントが得られます。
ここでは、国内企業の活用事例やSNSでバズを生んだ実例を紹介し共通する成功のポイントを解説します。
国内企業による活用事例3選
①無印良品:SNSでの生活提案投稿が拡散
無印良品は、ユーザーが自宅で使っている様子をInstagramで紹介するキャンペーンを展開。
リアルな使用風景が話題を呼び、購買意欲の後押しに成功しました。
②スシロー:お得情報を拡散するTwitter戦略
スシローはクーポンや限定メニューの情報をユーザーに拡散してもらうよう促しフォロワーのリアクションを上手く巻き込みました。
③ニトリ:YouTubeでの自発的な商品紹介
ニトリの商品を使った「ルームツアー」動画が人気を集め、企業がPRせずとも自然に売上増加につながりました。
SNSでの拡散を生んだ事例
SNSでのアーンドメディア成功事例として代表的なのがローソンの「からあげクン新味」キャンペーンです。
試食レポートやアレンジレシピがユーザーの間で話題となり、Twitter上では数日で数万リツイートを記録しました。
このような「自発的な体験共有」は企業側が用意した情報以上に、共感を呼びやすく拡散もされやすいのが特長です。
成功事例に学ぶポイントと共通点
成功しているアーンドメディア施策には、以下のような共通点があります。
- ユーザーがシェアしたくなる「体験」や「驚き」がある
- 商品やサービスの特徴が視覚的・感情的に伝わる
- 企業側がユーザーの投稿を丁寧に拾って拡散・反応している
つまり、ただ良い商品を出すだけでは不十分。 ユーザーが自然と話題にしたくなる「仕掛け」や「共感」が必要なのです。
SNS時代のアーンドメディア活用法
SNSが普及した現代では、アーンドメディアの主戦場が大きく変化しています。
ここでは、なぜSNSがアーンドメディアとして有効なのか、その理由とインフルエンサーやUGC(ユーザー生成コンテンツ)をどう活かすべきかを詳しく解説します。
SNSがアーンドメディアになる理由
SNSがアーンドメディアとみなされる最大の理由は、情報が自発的かつ拡散性を持って広がる点にあります。
企業が直接発信する情報ではなく、一般ユーザーのリアルな感想や体験が他のユーザーに伝播することで信頼性と影響力を持ちます。
たとえば、「この冷凍ピザ、最近の中で一番美味しかった!」というX(旧Twitter)の投稿が何万回もシェアされるようなケースがあります。
このようなクチコミの力は、従来の広告では得られない影響力を生むのです。
また、SNSのアルゴリズムは「共感」や「話題性」によって拡散範囲が広がる仕組みのため良質なアーンドメディアは自然と多くの人に届きやすくなります。
インフルエンサーとの連携手法
インフルエンサーと連携することで、アーンドメディア的な広がりを意図的に引き起こすことが可能です。
ここで重要なのは、「広告感を出しすぎない」こと。フォロワーから信頼されているインフルエンサーほど、不自然なPR投稿には反発が起きやすいため注意が必要です。
一例として、ある化粧品ブランドでは、「PR」と明記しつつも、実際の使用感や肌質との相性を正直に伝えてもらう形で投稿を依頼。
結果的に信頼を保ったままフォロワーの共感を得て、SNSで拡散される結果となりました。 成功のカギは、「あくまでもユーザーの視点で語られる内容」を重視することです。
ユーザー生成コンテンツ(UGC)の活かし方
UGC(User Generated Content)とは、ユーザーが自発的に作成・投稿したコンテンツを指します。
写真、動画、レビュー、レシピなどその形はさまざまですが、これを上手に活用することがアーンドメディア戦略の重要な一手になります。
たとえば、あるベーカリーでは「#うちのパン時間」というハッシュタグを通じて、パンのある朝食風景をInstagramに投稿してもらうキャンペーンを実施。
結果、200件以上のUGCが集まり、ブランドイメージの向上と新規来店数の増加に繋がりました。 UGCを活かすには、以下のようなポイントを押さえることが重要です。
- 投稿しやすいテーマやハッシュタグを提示する
- 公式アカウントでUGCを紹介・シェアする
- 投稿者とのコミュニケーションを丁寧に行う
アーンドメディアの効果測定の方法
アーンドメディアの価値は数値化しづらいと言われがちですが、近年は評価のための指標やツールも整ってきています。
ここでは、EMV(アーンドメディアバリュー)を中心に、効果測定の考え方と方法について詳しく解説します。
アーンドメディアバリュー(EMV)とは
EMV(Earned Media Value)とは、アーンドメディアによる露出が広告換算でどれほどの価値を持つかを金額ベースで評価する指標です。
たとえば、Instagramで10万人にリーチした投稿が、広告換算で30万円相当と見なされる場合、「その投稿のEMVは30万円」となります。
EMVはアーンドメディアがどれだけの経済的価値を生んでいるかを企業内で説明する材料として有効です。
ただし、EMVはあくまで目安であり、信頼性やブランドロイヤルティなどの「定量化しづらい効果」も考慮することが大切です。
EMVを活用した評価・指標の考え方
EMVを正しく活用するには、「どのチャネルで、どんな影響を与えたのか」を多角的に見ることが必要です。
主な評価指標としては以下のようなものがあります。
指標 | 内容 | 活用場面 |
---|---|---|
リーチ数 | 何人に届いたか | 認知度の推定 |
エンゲージメント率 | いいね・コメント・シェアなど | 共感・興味の度合い |
コンバージョン | 来店・購入・登録など | 実際の成果との連動 |
数値に頼りすぎず、「どの投稿がどんな反響を呼んだのか」を事例ベースで記録・分析することも重要です。
効果測定を可視化するツールや手法
アーンドメディアの効果測定には、以下のようなツールや手法がよく用いられます。
- SNS分析ツール(例:BuzzSumo, Meltwater, Brandwatchなど) 投稿のリーチ数、話題のキーワード、エンゲージメントを把握できる
- UGC管理ツール(例:Yotpo, Taggbox) ユーザー投稿の収集と分析が可能
- Googleアナリティクス/GA4 SNSからの流入後の行動を追跡
アーンドメディアのデメリットとリスク
アーンドメディアは信頼性の高いプロモーション手法ですが、すべてがメリットだけとは限りません。
情報をコントロールできない性質ゆえのリスクや予期せぬ炎上への備えも不可欠です。 ここでは主なデメリットや対策について解説します。
コントロールできない情報発信のリスク
アーンドメディア最大の特徴は「ユーザーや第三者によって語られること」。
つまり、企業が発信内容を直接管理できない点が大きなリスクでもあります。
たとえば、ある商品を紹介したインフルエンサーが、意図せず間違った使い方をしていたとします。
その投稿が拡散された場合、誤情報が世の中に広まってしまうことになります。
企業が気づく前に消費者の誤解が定着してしまうと信頼回復には時間がかかります。
そのため、普段からブランドや商品に関する発言をモニタリングし、異常があれば早期に対応する仕組みを整えておくことが必要です。
炎上や誤情報の拡散をどう防ぐか
SNSの特性上、わずかなきっかけで投稿が炎上するケースもあります。
たとえば、企業の謝罪対応に対する印象やあるユーザーの感情的な投稿が広まり、誤解や批判を呼ぶといったパターンです。
炎上や誤情報の拡散を未然に防ぐには、以下のような対策が考えられます。
- 定期的なSNSモニタリングを行う
- ユーザーからの投稿に迅速・誠実に対応する
- インフルエンサー起用時には、ガイドラインを事前に共有する
- 誤解を招く表現は避け、情報発信の透明性を保つ
また、万が一トラブルが発生した場合も企業としての誠意ある対応がその後の信頼回復に大きく関わってきます。
リスク対策としてできる準備とは
リスクを最小限に抑えるためには、平時からの準備が鍵となります。
特に以下の3つの体制を整えておくことが重要です。
- ソーシャルリスニング体制の構築 自社や製品に関する投稿をリアルタイムで監視できるようにする
- 危機対応マニュアルの整備 万が一炎上した場合のフローや、誰がどう対応するかを事前に決めておく
- 社内外の広報リテラシー向上 社員やインフルエンサーに対して、適切な情報発信や注意点を共有する
これらの準備をしておけば、突発的なトラブルにも落ち着いて対処できブランド価値の毀損を防ぐことができます。
アーンドメディアを活かすためのポイント
アーンドメディアは自然な形で共感を生み出せる一方、継続的な成果を上げるにはいくつかの前提条件があります。
この章では、活用において特に重要な3つの視点から成功のヒントを紹介します。
成功するための3つの前提条件
アーンドメディアを有効に機能させるためには、以下の3つの条件が整っている必要があります。
- 話題化しやすい「伝えたくなる要素」 製品のユニークさ、驚き、共感など、シェアされる理由が必要です。
- ユーザーの発信を促す環境 ハッシュタグ、キャンペーン、UGCの紹介など、投稿の「きっかけ作り」が大切です。
- 一貫したブランドメッセージ ユーザーが自由に語る中でも、企業としての軸がぶれないよう設計しましょう
このような基盤があることでアーンドメディアの効果は大きく高まり単発で終わらない継続的な広がりを生み出すことができます。
コンテンツ設計・PRとの連携がカギ
アーンドメディアを成功させるには、PRチームやコンテンツ制作担当と密に連携することが不可欠です。
たとえば、新製品発表時にオウンドメディアで「開発ストーリー」や「想い」を発信し、それに共感したユーザーが自らSNSでシェアしてくれるといった流れが理想です。
さらに、ペイドメディアでの認知向上施策と合わせて展開することで、話題化の“種”を一気に広げることが可能になります。
広報・PRの動きとUGCの連動を設計段階から意識することで自然なアーンドメディア効果が引き出せます。
コンテンツマーケティングとは?SEO対策との関係と運用方法を解説
社内外の連携体制を整える重要性
アーンドメディアはマーケティングだけでなく、広報・商品開発・カスタマーサポートなど複数部門に関係するテーマです。
そのため、社内での情報共有や連携体制がなければ、一貫したメッセージが発信されにくくなります。
また、インフルエンサーやパートナー企業との連携も重要です。 関係者全員が「自社ブランドをどう捉え、どう発信していくか」という共通認識を持てるよう、定期的な勉強会やガイドラインの整備を行うとよいでしょう。
内外の連携体制を強化することで、アーンドメディアの力を最大限に引き出すことができます。
まとめ
アーンドメディアは、ユーザーや第三者による自発的な情報発信によって信頼を得る手法です。
オウンドメディアやペイドメディアと違い、企業がコントロールしにくい面がある一方、うまく活用できれば非常に強力な影響力を持ちます。
SNSやUGCの活用、効果測定の工夫、そしてリスクへの備えを通じて、アーンドメディアの価値を高めることが可能です。
最も大切なのは、「ユーザーに語ってもらいたくなる体験」を設計し、その声を丁寧に受け止め、広げていく姿勢です。
3つのメディアをバランスよく組み合わせ、信頼と共感を得るマーケティング戦略を構築していきましょう。
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